

有光 和也さん
◆◆ 有光商店 オーナー ◆◆
人と人との出会いや結びつきを大事にしながら、周囲を巻き込み、協力しながら地域のために新たな取り組みを常に模索している有光和也さん。老舗商店の2代目オーナーと海辺のおしゃれなカフェの共同経営者の二つの顔で、地域を楽しく盛り上げる推進役である有光さんにお話を伺いました。
有光さんの第一印象は、柔和、そして抱擁。取材時も常に柔らかい笑顔で対応してもらい、語り口にも押しつけがましさは一切なく、その誠実な人柄が伝わってくるようでした。
生まれは豊浦町小串。地元で生まれ育った生粋の小串っ子なんです。小学校では柔道を、中学では陸上と相撲、そして野球を、高校は地元を離れ萩でラグビー部に所属していたそうです。様々なスポーツを通じて、対戦相手やチームメイトとの交流とリスペクトの心が育まれたことが、現在の有光さんの柔和な印象に繋がっているのかも。
福岡の大学へ進学。卒業後はデパートに就職し3年間、下関市唐戸市場の問屋で3年間、居酒屋で3年間働いたのち、実家の「フードショップありみつ」を継ぐために戻ってきました。この地に残る良い物を残し、そして未来につなげていきたい。そんな思いから育ててもらった小串の地に戻ってきた、といいます。
約9年ぶりに戻ってきた時、「小串にはなにもない」というネガティブな感情を持った人が多いと感じたそうです。そして、それを何とかしたい、という思いがコミュニティの活性化に尽力する有光さんの原点になりました。
まず取り掛かったのは空き家対策。
北九州のリノベーションスクールで勉強し、会社を立ち上げサブリース契約で入居者を増やす、など試みましたが、なかなかうまくいかなかったそうです。そして思い悩んでいるときに出会ったのが、豊浦へ移住してきた芸術家の石原英介さん、通称えーちゃん(ここからは親しみを込めて、えーちゃん、と呼ばせていただきます)。芸術・絵画、そしてその人柄を通じて、地域の人と人の出会いや、コミュニティの創造を演出するえーちゃんに影響され「人と人のつながりや、コミュニケーションが、地域課題を解決する最大の武器だ」という思いに至りました。空き家のオーナーと、それを借りたい人のマッチングも、結局は人間同士の出会いから始まるんだ、と。
そして、有光さんが進める空き家対策に沿って、小串の人たちが集い、くつろぎ、楽しめる場所を作りたい、と立ち上げたのが、「こぐしの海の畑~umihata」です。通常のカフェメニューや弁当販売、そしてバー形式の営業もしつつ、20名ほどの出資者がそれぞれが考えたイベントや作品販売などを企画・運営する自由でおしゃれな空間となっています。ここは、もともと空き家だったものをカフェに変えたお店で、小串海岸沿いの素晴らしいシチュエーション。
お店の詳しい紹介は「とようらナビ」の“食べる”のコーナーでご覧いただき、そしてぜひ訪れてみてください。
豊かな自然と、良質な温泉のある豊浦は、観光客を増やすために様々な取り組みがなされています。有光さんも、空き家対策をはじめとする地域コミュニティの活性化策を通じて、「将来的には長期滞在型で訪れてくれるお客様を増やしたい」と考えています。そのためには、ハード面の充実はもちろん、もともと備わっている、訪れる人を心地よく迎える風土をもっともっと醸成させたい、といいます。「一つ一つの取り組みは大きくないかもしれないけど、ちょっとしたことの連続が奇跡を生むんだと思います」。
有光さんとえーちゃんの出会いも一つの奇跡。その奇跡が「こぐしの海の畑~umihata」を創り、またそこに集う人たちの出会いが新たな奇跡を生んで、いずれ大きなうねりになっていく。その発端をいま見ているような気がしています。
ちょっとカッコつけた文章になっちゃいましたので、最後に有光さんの素顔を少し紹介します。普段は、実家でありご自身がオーナーの「フードショップありみつ」で、お客様と気さくに会話する商人さん。お客様に親しまれている様子がすごく伝わってきます。あと、下戸だそうです。ほとんど飲めない。でもお酒を作るのは好きで、umihataのバータイムでは腕を振るっています。そして、疲れた時の気分転換は、夜の海岸の散歩。満点の星空の下、小串の澄んだ空気を吸い込んで、小串の未来に思いを馳せている有光さんの姿が想像できました。
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