

ノッポさんこと 石川 雄一(いしかわ ゆういち)さん
◆◆ 農家ダンサー ◆◆
レモン農家とプロダンサー、そしてラジオパーソナリティという3つの顔を持つノッポさん。
豊浦出身の農家ダンサー、ノッポさんこと石川雄一さんの思いやエネルギーの根源となるものとは。
それは、かけがえのない家族と生まれ育った豊浦への愛でした。
"みなさんは、「海峡レモン」というブランドのレモンをご存じですか?
関門海峡を挟んだ下関と門司港の有志が、地域の気候と土壌に合う農産物として、国産のレモンを作ってブランド化し、関門エリアを「レモン香る海峡のまちにする」という目標を掲げて立ち上げたプロジェクト。
そこから生まれたのが、「海峡レモン」です。
「海峡レモン部」という名の“部活動”には、大学生から高齢者、下関の人から遠方にお住まいの人まで、約60名が参加しています。
このプロジェクトの発起人の一人が、豊浦在住の農家ダンサー、ノッポさんこと石川雄一さんです。
肩書どおりプロダンサーでもあるノッポさんは、「海峡レモン」普及のため、レモンそのものの栽培から収穫、「海峡レモンソーダ」の開発と販売、海峡レモン祭の企画・運営、Tシャツやエコバッグといった「海峡レモン」関連グッズの考案など、日々精力的に活動しています。
高校時代は、卓球一筋。ノッポさんが在籍していた卓球部は大変強かったそうで、部活を引退するときには、まさに“燃え尽き状態”だったそう。高校を卒業したノッポさんは、のめり込めるものを掴めないまま、サラリーマン生活を送る日々。そんな暮らしが続いていたときに出会ったのが、ダンスでした。このとき、ノッポさんは21歳。もともと観るのは好きだったそうですが、「自分でも踊りたい」と思い、色々な人に教わりながら上達を目指したのだそうです。
そんな中、島根県出雲の教室で出会ったのが、のちに奥さんとなるメグさんでした。メグさんのダンスは、天才的な上手さだったと言います。当時のメグさんは、コンテスト上位入賞の常連。一方、ノッポさんは、予選落ちの連続。伸び悩む30歳のノッポさんは、「これでダメならやめよう」と覚悟して、ダンスバトルに臨みました。そのとき、ほとんど諦めていたノッポさんの目に飛び込んできたのは、世界大会に出場してきたトップダンサーたちの演技でした。「まさに細胞が全部ひっくり返ったような感覚だった。基礎・基本にとらわれず、自らの感情を思いのままに表現している。これでいいんだ、と気付かされた」と語るノッポさん。まさに、ノッポさんが、プロダンサーとして“覚醒した瞬間”でした。
それからのノッポさんは、メグさんが見ても驚くほど上達。九州を代表するダンスバトル「Carnival」での4度の優勝を果たし、メグさんとのダンスユニット「nacayoci」で、世界大会「WDC」九州代表として出場するなど、輝かしい実績を残すようになりました。"
「例えば、料理しているときに、キッチンでかっこよくノレる。普段の暮らしの中で、鼻歌を歌うようにダンスを楽しむ。そんな日常を皆さんに楽しんでもらえるのが理想です」と語るノッポさん。
ダンスといえば、運動会のフォークダンスくらいだった昭和生まれの筆者も、ノッポさんの言葉に「自分もやれるんじゃね?」と、ちょっとだけ思わされちゃいました……。
明るく柔らかいキャラクターのノッポさんは、各種メディアにも取り上げられ、Nexco⻄日本が運営する⾳声メディア「関門 ON AIR」のパーソナリティとしても活躍。自身の声と言葉で、関門エリアの情報や地域の特産品など地域の魅力を発信しています。
ちなみに、ノッポさんというニックネーム、いつもチューリップハットを被っていた時期があり、それを見たダンスの師匠から「キミ、今日からノッポさんね」と言われたのが始まりだったそうです。あちらのノッポさんはしゃべらないキャラクターでしたが、こちらのノッポさんは、とてもよく通る明るい声をお持ちで、⾳声メディアのパーソナリティには適任だと思います。
ノッポさんは、生まれ故郷の豊浦について、“心も体も安まる場所”と表現してくれました。「最近は、芸術家や工芸家など、作家やクリエイターが豊浦に移住してきている。何かを生み出すには、集中する時間が必要だけど、その分、心を休ませる場所や時間も必要。そういう意味でも、豊浦は、安める場所として最適。非日常的な刺激も時には必要だけど、それは、穏やかな日常があってこそ。豊浦にはそれがある」
「海峡レモン」をブランド化して全国に打ち出すという壮大な目標の達成には、やはり“生みの苦しさ”も伴うかもしれません。しかし、ノッポさんには、メグさんというかけがえのないパートナーと、二人の間に授かった最愛の娘さん、そして、大好きな豊浦の自然という安らぎの場所があります。
ダンスというエンターテイメントは、人々に非日常の楽しさを提供するものですが、演じる側のノッポさんには、彼と支え合う家族、そして、家族や生徒さんと過ごす豊浦での穏やかな日常があります。
“集中と安らぎ”、“非日常と日常”を体感できる、至福のひと時。
「農家ダンサーのノッポさんは、そんな素敵な瞬間を「海峡レモン」とダンスを通じて演出してくれている」。そんな風に思えた取材の一日でした。
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